
「インプラントにしたいけれど、手術の流れや期間が分からなくて不安…」
「仕事が忙しいけれど、通院はどれくらい必要なの?」
このような疑問や不安をお持ちではありませんか?
インプラントは外科手術を伴う治療であるため、一般的な虫歯治療とは異なり、事前の綿密な計画と「治癒期間(インプラントと骨が結合する時間)」が非常に重要です。そのため、どうしても治療期間は長期にわたる傾向があります。
結論から申し上げますと、インプラント治療の期間は平均して3ヶ月~6ヶ月程度、通院回数は6回~10回程度が一般的です(※患者様の骨の状態や選択する術式により異なります)。
本記事では、インプラント治療のスペシャリストの視点から、カウンセリングから手術、そして最終的な歯が入るまでの「具体的な治療の流れ」をステップごとに分かりやすく解説します。
この記事を読み終える頃には、治療の全体像がクリアになり、いつ、どのような処置が行われるのかという見通しが立つことで、安心して治療への第一歩を踏み出せるようになるはずです。
インプラント治療の全体像と標準的な期間

まずは詳細な各ステップに入る前に、治療のゴールまでの全体像を把握しましょう。
インプラント治療は「検査・手術」だけでなく、その後の「待機期間」が大きなウェイトを占めるのが特徴です。
治療完了までの目安期間(3ヶ月~6ヶ月)
インプラント治療にかかる期間は、埋入する場所(上顎か下顎か)や骨の質によって大きく異なります。一般的に、骨が柔らかい上顎の方が、骨とインプラントが結合するまでに時間を要します。
一般的な通院回数と各ステップの概要
治療期間中の通院回数は、トラブルがなければ合計6回〜10回程度です。
忙しい方のために、主な通院のタイミングと内容を整理しました。
1〜2回目(検査・診断): CT撮影、口腔内検査、治療計画の説明。
3回目(手術当日): インプラント埋入手術(1次手術)。
4回目(抜糸・消毒): 手術の約1〜2週間後。傷口の確認。
(待機期間): ※この間は、基本的に通院は不要ですが、仮歯の調整などで来院が必要な場合もあります。
5回目(2次手術): インプラントの頭出しを行い、歯茎の形を整える器具を装着。
6〜7回目(型取り・試適): 精密な型取りや、噛み合わせの確認。
8回目(装着): 完成した人工歯(上部構造)を装着。
それ以降: 定期メンテナンス(3ヶ月〜半年に1回)。
このように、インプラント治療は「ステップごとの確実な処置」と「待つ時間」の組み合わせで進んでいきます。
Step1:カウンセリング・精密検査(治療計画の立案)

インプラント治療の成功率は、実は手術の腕前だけでなく「事前の検査と計画」で8割が決まると言っても過言ではありません。まずは安全な治療が可能かどうかを慎重に見極めます。
CT撮影・口腔内検査の重要性
通常の歯科治療では「パノラマレントゲン(平面的)」な撮影が主ですが、インプラント治療においては「歯科用CT(3次元的)」による撮影が必須です。
顎の骨の中には、重要な神経や血管が通っています。CT撮影を行うことで、以下の情報をミリ単位で正確に把握します。
骨の厚み、高さ、硬さ
神経や血管の正確な位置
隣り合う歯の根の状態
「レントゲンだけで大丈夫」という判断は非常に危険です。安全性を最優先するクリニックでは、必ずCTデータを基にコンピュータシミュレーションを行い、インプラントを埋め込む最適な位置や角度を決定します。
治療費・リスク・期間のすり合わせ
検査結果に基づき、具体的な治療計画が提案されます。
ここでは、単に「できます」という話だけでなく、以下の点について十分な説明(インフォームド・コンセント)があるかを確認してください。
全身疾患の確認: 糖尿病、高血圧、骨粗鬆症などの既往歴がある場合、連携が必要になることがあります。
費用の総額: 手術費だけでなく、被せ物の費用やメンテナンス費を含めた総額。
リスクの説明: 神経損傷のリスクや、喫煙による失敗リスクなど、ネガティブな情報も隠さずに説明してくれる医師が信頼できます。
Step2:インプラント埋入手術(1次手術)

検査と計画が終われば、いよいよ手術です。「手術」と聞くと恐怖心を感じる方が多いですが、実際にはどのような手順で行われるのでしょうか。
手術当日の流れと所要時間
一般的な埋入手術(1次手術)の流れは以下の通りです。
麻酔: 局所麻酔を十分に行います。
切開: 歯茎を小さく切開し、顎の骨を露出させます。
埋入: ドリルで骨に穴を開け、インプラント体(チタン製の人工歯根)を埋め込みます。
縫合: 歯茎を縫い合わせて閉じます。
手術時間は本数にもよりますが、1本あたり30分〜1時間程度で終了することがほとんどです。入院の必要はなく、その日のうちに帰宅できます。
痛みや腫れはある?術後の過ごし方
最も気になる「痛み」についてですが、術中は局所麻酔が効いているため、痛みを感じることはほとんどありません。
「ドリルの音や振動が怖い」という方には、点滴でリラックス状態を作る「静脈内鎮静法(セデーション)」という方法を選択できるクリニックもあります。半分眠ったような状態で手術を受けられるため、恐怖心が強い方には推奨されます。
術後の痛みや腫れは、麻酔が切れた後にピークを迎えますが(通常2〜3日程度)、処方される痛み止めと抗生物質を服用することでコントロール可能な範囲であることが大半です。
Step3:治癒期間(オッセオインテグレーション)

手術が終わると、インプラントと骨が結合するのを待つ「治癒期間(待機期間)」に入ります。ここはインプラント治療特有のステップです。
インプラントと骨が結合するのを待つ理由
インプラントに使用されるチタンは、生体の骨と結合する性質を持っています。これを専門用語で「オッセオインテグレーション(骨結合)」と呼びます。
この結合が不十分なまま次のステップに進んでしまうと、噛む力に耐えられずインプラントが抜け落ちてしまう原因になります。
「早く歯を入れたい」と焦る気持ちも分かりますが、建物の基礎を固めるのと同様に、ここが最も重要な期間です。
下顎の目安: 2〜3ヶ月
上顎の目安: 3〜6ヶ月(上顎の方が骨が柔らかいため長くかかります)
この期間、歯はどうなる?(仮歯について)
「待っている数ヶ月間、歯がないまま過ごさなければならないの?」と不安に思う方もいるでしょう。
前歯の場合: 見た目に大きく関わるため、手術当日にプラスチック製の「仮歯」を入れるケースが一般的です。ただし、インプラントに負荷をかけないよう、噛み合わせは調整されます。
奥歯の場合: 見た目に影響が少ない場合、患部の安静を優先して、歯がない状態で過ごすこともあります。どうしても必要な場合は、取り外し式の義歯などを使用します。
Step4:連結部分の装着・人工歯の製作(2次手術)

骨とインプラントが完全に結合したことを確認した後、次のステップへ進みます。
2回法と1回法の違いとは?
多くの症例で採用される「2回法」では、歯茎の下に埋まっているインプラントの頭を出すために、もう一度歯茎を小さく切開する処置(2次手術)を行います。
「また手術?」と思われるかもしれませんが、これは1次手術に比べて非常に軽く、短時間で終わる処置です。ここで「アバットメント」と呼ばれる連結部品を装着し、歯茎の形を整えます。
※骨の状態が良い場合などは、1回目の手術で頭出しまで行う「1回法」が採用されることもあります。
型取りと最終的な被せ物の装着
歯茎の状態が落ち着いたら、最終的な人工歯(上部構造)を作るための精密な型取りを行います。 インプラントは天然歯と違って動かないため、ミクロン単位の精度が求められます。噛み合わせのバランスを慎重に調整し、完成した人工歯を装着して、ようやく治療完了となります。
Step5:治療終了後のメンテナンス(ここからがスタート)

「歯が入った!これで終わり!」と思いがちですが、インプラント治療において本当のスタートはここからです。
インプラント周囲炎を防ぐ定期検診の内容
インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病に似た「インプラント周囲炎」になるリスクがあります。
天然歯にはある「歯根膜」という防御壁がインプラントにはないため、一度細菌感染すると進行が早く、最悪の場合、骨が溶けてインプラントが抜け落ちてしまいます。
これを防ぐためには、3ヶ月〜半年に1回程度の定期検診(メンテナンス)が必須です。
噛み合わせのチェック(強く当たりすぎていないか)
専用器具によるクリーニング
ネジの緩み確認
自宅でのお手入れ方法
歯科医院でのプロケアに加え、ご自宅での毎日のセルフケアも重要です。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使い、インプラントと歯茎の境目の汚れを徹底的に落とす習慣をつけましょう。
適切なメンテナンスを続ければ、インプラントは10年、20年、あるいは生涯にわたって「第2の永久歯」として機能します。
インプラント治療の流れに関するよくある質問(FAQ)
Q. 治療期間を短くする方法はある?
A. 条件が整えば可能です。
骨の量や質が十分にあり、初期固定がしっかり得られた場合に限り、手術当日に仮歯を入れてすぐに機能させる「抜歯即時埋入」や「即時荷重(イミディエートローディング)」という方法があります。ただし、適応症例は限られており、リスクも伴うため、担当医とよく相談する必要があります。
Q. 手術の日に入浴や食事はできる?
A. 制限があります。
手術当日は、血行が良くなると出血や痛みの原因になるため、熱いお風呂や激しい運動、飲酒は控えてください(シャワー程度ならOKです)。
食事は麻酔が切れてから、反対側の歯で柔らかいものを食べるようにしましょう。刺激物(辛いものなど)は避けてください。
Q. 途中で転勤や引越しになったらどうなる?
A. 転院先を探す必要があります。
インプラントはメーカーによって部品の規格が異なります。引っ越す可能性がある場合は、事前に伝えておき、治療内容や使用したインプラントのメーカー名が記載された**「インプラントカード(手帳)」**などを貰っておくと、転居先の歯科医院でもスムーズにメンテナンスを引き継げます。
まとめ:安全なインプラント治療は正しい検査と計画から
インプラント治療は、開始から完了まで3ヶ月〜半年程度かかる、長期的なプロジェクトです。
「期間が長い」と感じるかもしれませんが、その時間は、インプラントをあなたの体の一部としてしっかりと定着させるために必要な「安全のための期間」です。
記事のポイントを整理します。
治療の全体像は「検査→手術→治癒期間(待機)→装着→メンテナンス」。
手術自体は短時間で痛みも少ないが、その後の「骨との結合期間」が成功の鍵。
治療が終わった後も、インプラント周囲炎を防ぐために定期検診が必須。
失敗しないインプラント治療への第一歩は、「現在の骨の状態を正しく知ること」です。
まずは、CT設備が整い、メリットだけでなくリスクもしっかり説明してくれる歯科医院の「カウンセリング」を受けてみてはいかがでしょうか。
あなたの不安が解消され、美味しく食事ができる毎日を取り戻せることを願っています。