おすすめは白いセラミック?それとも銀歯?両者の違いとメリット・デメリットを歯科医が解説

白いセラミック?それとも銀歯?両者の違い

虫歯や外傷などで歯の大きく損傷した場合は、被せ物治療が必要となります。クラウンと呼ばれる人工歯を製作し、残った歯質に被せることで、損傷を受けた歯の審美性や機能性を回復できます。ここではそんな被せ物治療で選択する材料は白いセラミックか、それとも銀歯が良いのか詳しく解説をします。




審美歯科のセラミックについて

女性・疑問

歯の美しさを追求する審美治療では、「セラミック」という材料が広く使用されています。セラミックというと、食器や包丁などに使われている材料として有名ですが、医療の分野にも応用されているのです。とくに歯科治療においてはその性質上、セラミックのメリットを享受しやすいといえるでしょう。そのため口元の審美性が重要となる芸能人はもちろん、一般の人でも銀歯ではなくセラミックを選択する人が増えてきています。

◎セラミックなぜ人気が高いのか

セラミックを用いた審美歯科治療は、天然歯そっくりの見た目に仕上げられる点が最大の特長といえます。失った歯を元通りに近い状態まで回復できることは、何にもまさるメリットといえるでしょう。見た目に関しては、保険診療の銀歯と雲泥の差が見られます。口述しますが、セラミックが銀歯にまさっているのは見た目だけではありません。身体への安全性も含めて銀歯にまさることから、白いセラミックの人気が高まっているといえます。

セラミックの種類

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審美歯科治療で使用するセラミックには、いくつかの種類があります。それぞれに異なる特性があるため、ご自身のケースに最善といえるものを選ぶことが大切です。
◎オールセラミック

オールセラミックは、セラミックの代名詞ともいえる種類です。歯科材料の中で最も美しいと称賛されるほど見た目が良く、より良い仕上がりを追求する方におすすめの材料となっています。オールセラミックは仕上がりがあまりにも自然であることから、両隣の天然歯と見事に調和します。治療後はどこにオールセラミックを入れたのか判別できなくなるくらいです。

◎ジルコニア

ジルコニアは、少し特殊なセラミックですが、最近はオールセラミックと同じくらい適応の幅が広がっています。金属に匹敵する強度を誇ることから、人工ダイヤモンドと呼ばれることがあるくらいです。とにかく硬くて割れにくいので、強い力がかかりやすい大臼歯(奥歯)の審美歯科治療に適しています。前歯にジルコニアを用いることもありますが、一般的には奥歯の治療に向いているといえます。

◎ハイブリッドセラミック

ハイブリッドセラミックとは、「セラミック+レジン」の歯科材料です。標準的なセラミックではないので、オールセラミックほど美しくはありません。歯科用プラスチックであるレジンよりは審美性に優れており、耐久性も高いです。つまり、セラミックとレジンの中間的な性質を持った材料といえます。オールセラミックやジルコニアは費用がやや高いことから、経済的負担を減らす目的でハイブリッドセラミックを選択する人が多いです。

◎メタルボンド

メタルボンドは、「銀歯+セラミック」の被せ物です。土台は銀歯で、表側をセラミックで覆います。その結果、金属が持つ高い強度とセラミックの自然な美しさの両方を手に入れることができます。

セラミックのメリット・デメリット

セラミック矯正

審美歯科治療で使用するセラミックには、次に挙げるようなメリットとデメリットがあります。銀歯と白いセラミックで迷われている方は、この点もしっかり理解しておくことが大切です。

【セラミックのメリット】

◎見た目が天然そっくり

審美歯科治療でセラミックを選択する人の多くは、見た目の良さに惹かれています。セラミックは天然歯の色調・光沢・透明感・質感までを忠実に再現できるため、歯を治療したようには見えないのです。そうした天然歯そっくりの仕上がりは、セラミックならではの特長といえます。

◎金属アレルギーのリスクがない

セラミックはノンメタルなので、金属アレルギーを発症することはありません。治療後も10年、20年と使い続けていく中で、金属アレルギーのリスクにおびえながら生活する必要がなくなります。ただし、セラミックの種類の中で紹介したメタルボンドは例外です。メタルボンドは、土台が金属で作られているため、金属アレルギーのリスクを伴います。あくまでセラミックのみを使用した治療で金属アレルギーのリスクを取り除けます。

◎材料の安定性が高く劣化しにくい

詰め物・被せ物の材料としては、安定性が極めて重要なポイントのひとつとなります。なぜなら、お口の中は唾液で湿度100%になっており、食事の際には高温もしくは低温に晒されことが日常だからです。そうした過酷な環境で高い安定性を維持できる材料は、被せ物治療で有益な効果を発揮してくれることでしょう。今回のテーマであるセラミックがまさにそれです。

セラミックの安定性は極めて高く、過酷な口内環境に長期間晒されていても変質することがほとんどありません。実際、10年前に入れたセラミック歯を今でも当時と同じように美しく、しかも正常に機能しているケースは珍しくないのです。それと比べて銀歯やレジン歯は、経年的な劣化が起こりやすく、治療から10年後に同じ状態を保っていられることは稀といえます。

◎虫歯が再発しにくい

これは材料の安定性が高いことに関連したメリットです。銀歯やレジン歯は、被せ物自体が変形・変色したり、歯質に接着しているセメントが劣化したりすることで虫歯の再発リスクが高まります。その点、歯質にぴったりと接着でき、被せ物自体の変質も少ないセラミックは、細菌が入り込むすき間も生じにくいため、虫歯の再発リスクも低くなっているのです。虫歯が再発しにくいということは、被せ物の寿命の延伸にも寄与します。

【セラミックのデメリット】

◎割れることがある

セラミックは硬い材料です。同じく白い材料であるレジンと比較すると、強度の高さが際立ちます。ただ、セラミック製のお皿を想像していただくとわかりますが、極端に強い力がかかると割れることがあるのです。セラミックの場合は、少し削れるとか、ひびが入るというトラブルはほとんど起こらず、損傷を受ける時は一気に割れることが多いです。これはセラミックの最も大きなデメリットといえます。

◎歯を削る量がやや多い

前段で述べたように、セラミックは強い圧力がかかると割れる場合があるため、あらかじめ厚めに作ります。厚い被せ物を装着するということは、その分だけ歯を多く削らなければなりません。もちろん、セラミッククラウンだからといって極端に歯の切削量が多くなるわけではありませんが、銀歯と比べると歯にかかる負担が大きくなります。場合によっては神経を抜く処置を行った上で、被せ物治療を実施します。

◎保険適用外となる

審美歯科治療で使用するセラミックは、原則として保険適用外となります。つまり、自費診療でセラミック治療を受けることになるため、費用負担も自ずと大きくなります。

セラミックと銀歯(保険適用)の違いを徹底比較!

セラミックと銀歯

ここまではセラミックの種類や特徴、メリット・デメリットについて解説してきましたが、銀歯との違いについても知りたいところかと思います。白い材料のセラミックと保険適用の銀歯には、以下に挙げるような点で違いが見られます。

【比較1】見た目(審美性)

見た目に関しては、銀歯よりもセラミックの方が圧倒的に優れています。銀歯は文字通り銀色をしているため、お口を開けた時にギラギラと光を反射します。一方、セラミックは天然歯そっくりな被せ物を装着できることから、見た目が自然で美しいです。

【比較2】虫歯の再発リスク(安定性)

前述したように、セラミックは安定性の高い材料なので経年劣化が起こりにくく、虫歯の再発リスクも低くなっています。材料が劣化しやすい銀歯とは違い、治療から長期間経過しても安心して使用し続けられます。

【比較3】アレルギーのリスク

銀歯には、金属アレルギーのリスクがあります。銀歯は、金・銀・銅・パラジウム・スズ・イリジウムなど、さまざまな金属で構成された合金なので、その中にひとつでもアレルゲンとなるものが含まれていたら、金属アレルギーのリスクが生じます。一方、ノンメタル材料のセラミックで金属アレルギーになる可能性はゼロです。土台が金属のメタルボンドに関しては、アレルギーの面で銀歯と大きな違いは見られません。

【比較4】歯を削る量

歯を削る量は、銀歯の方が少ないです。銀歯はセラミック以上に丈夫な材料なので、被せ物を薄く作ることができます。金属に匹敵するジルコニアであれば、歯を削る量を最小限に抑えられますが、やはり銀歯に軍配が上がります。

【比較】保険適用の有無

金銀パラジウム合金を用いた銀歯には保険が適用されます。メタルボンドや金歯は、保険が適用されず、自費診療となる点にご注意ください。その他のオールセラミックやジルコニア、ハイブリッドセラミックなども原則として保険適用外となります。

結局どっちがおすすめ?セラミックに交換すべき人・ケース・症例とは?

結局どっちがおすすめ?セラミックに交換すべき人・ケース・症例とは?

セラミックと銀歯の違いを比較すると、前者の優れた点が自然と浮き上がってきます。セラミックというのはそれくらい優秀な材料なので、芸能人にも人気があるのでしょう。ただし、すべての症例で銀歯よりもセラミックがおすすめであるわけではありません。ケースによってはセラミックよりも銀歯が向いている場合もあるのです。ここではセラミックに交換すべき人と銀歯で治療すべき人の2つに分けて、具体的なケースを取りあげます。

◎セラミックに交換すべき人

次に挙げるような希望をお持ちの人や症状を抱えている人は、セラミックに交換すべきといえます。

・金属アレルギーを持っている
・歯茎が黒ずむメタルタトゥーを防ぎたい
・被せ物の見た目の良さを追求したい
・虫歯が再発リスクを最小限に抑えたい
・安定性の高い被せ物を装着したい

◎銀歯で治療すべき人

次に挙げるような希望をお持ちの人や症状を抱えている人は、銀歯で治療をする、もしくは銀歯をそのまま使い続けることがおすすめです。

・保険適用の範囲内で被せ物治療を受けたい
・歯を大きく削りたくない

歯医者がセラミックをすすめる理由

セラミックと銀歯

歯医者は、銀歯とセラミックで迷っている患者さんがいた場合は、両方の特徴についてバランスよく説明をします。ただ、どうしてもセラミックの方が優れている面が多いため、銀歯を強く推奨する歯医者はあまりいないのが現実です。これは歯医者が患者さんに自費診療を選んでもらいたいからではなく、セラミックが本当に銀歯よりも優れた材料であるからこその行動といえます。

実際、自分自身や家族、友人などの歯科治療で銀歯とセラミック歯を選択する場面があった場合は、迷うことなくセラミックを選ぶ、もしくは進めるすすめることでしょう。なぜならセラミックは見た目が美しく、身体にも優しく、再治療のリスクを抑えられる素晴らしい素材だからです。銀歯よりも歯を大きく削らなければならない欠点も、装置の寿命の長さが補ってくれることでしょう。

まとめ

結局どっちがおすすめ?セラミックに交換すべき人・ケース・症例とは?

このように、白いセラミックとギラギラとした金属製の銀歯には、驚くほど多くの違いがあります。それぞれに異なるメリット・デメリットがあることから、すべてを正確に理解した上で治療法を選択する必要があります。ちなみに、経済面を最重要視しないのであれば、ほとんどのケースでセラミックがおすすめといえます。それは歯科医師の中でも共通した認識なのではないでしょうか。